「谷口与鹿との想い出」 あらすじ
「谷口与鹿との想い出」は、前編と後編の二部構成になって
います。前編は、天才彫り師、谷口与鹿(たにぐち よろく)に
憧れる小学生の男の子が夢の中で土下座して弟子にしてもらう
ところから物語は始まります。
しかし大学生になった男に与鹿は「屋台彫刻の時代は終わ
った。お前は別の道で一流を目指せ!」と説得し
、とうとう男は
彫り師になる夢を断念します。
大学を卒業したあと男は新聞記者を経て写真家への道を歩み
ますが、いろいろな場面で与鹿は顔を出し、男が夢を叶えられ
るよう応援します。
「写真家の夢が叶った暁には
⋯⋯」
実は
、与鹿と男との間には固い契りが結ばれていました。前編は
谷口与鹿と男が一緒に歩んだ夢の頂までの道のりが時系列で綴
られています。
後編は、谷口与鹿が遺した貴重な形見を巡って見知らぬ相手
と決闘を繰り広げるドラマが臨場感たっぷりに展開します。前
編は男の写真家としての経歴と陰で支えた与鹿の存在について
の謎解きが中心ですが、後編は内容が一変します。
与鹿が江戸時代から飛び出して現代社会で男に自分の形見を
渡すために八面六臂の働きをします。与鹿と男との間で交わさ
れる生々しい会話のシーンもたくさん描写されており
、酒豪だっ
た天才彫り師の知られざる一面までも窺うことができます。
勝負師としての勘の鋭さばかりか、どんなに追い詰められて
も逆境をはねのける粘り強さが興味をそそるでしょう。
(C) Masahiko Yanagisawa / SPORTS CREATE